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リスト/ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」


リスト/ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」

14世紀のイタリアで書かれた ダンテ・アリギエーリの叙事詩 La Divina Commedia 「神曲」は、三位一体の考えで書かれていて、ルネサンス を代表する作品と謂われている。地獄、煉獄、天国の各篇とも、最終は星 (stella) という言葉で結ばれ、地獄篇はキリスト教新約聖書外典の「ペトロの黙示録」が関連している。

19世紀に入り、1861-1868年 フランスの画家Paul Gustave Dore (ギュスターヴ・ドレ)が ダンテの三部作「神曲」。Inferno (インフェルノ: 地獄篇)、Purgatorio (プルガトーリオ: 煉獄篇)、Paradiso (パラディーゾ: 天国篇)の挿入画を描いた。ドレは、版画家・油彩画家でもある。その宗教画は見る者をくぎ付けにする。

あらすじは
ユリウス暦1300年の聖金曜日(復活祭前)、暗い森の中に迷い込んだダンテは、古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼に導かれて地獄、煉獄、天国と彼岸の国を遍歴。ウェルギリウスは、地獄の九圏を通ってダンテを案内し、地球の中心部、魔王ルチーフェロの幽閉されているところへ。地球の対蹠点に抜けて煉獄山にたどり着く。ダンテは、煉獄山を登るにつれて罪が清められ、煉獄の山頂でウェルギリウスと別れる。そして、ダンテは、そこで再会した永遠の淑女ベアトリーチェの導きで天界へと昇天し、各星の天を巡って至高天(エンピレオ)へと昇りつめ、神を見る。

ここで大切なのは、天国は「魂」しかない世界だが、彼らが一番望んでいたものは何だったのか?もうこれ以上 ないだろう彼らにも未練(?)があった。それは 自分の肉体を一目みたかったというのだ。

地上は 魂 肉体が宿る 喜怒哀楽の世界・・・ 愛しみ 憎しみ 恐れ 恨み 妬み 苦しみ がある。これを 人間の欲望という。

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リストは「ダンテの神曲」に親しんでおり 神格化されたものと 自分をクロスさせていたかもしれない。

「巡礼の年 イタリア」7曲の組曲の最後の曲 ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」は 激しく悪魔的な表現と対照的に 清廉された輝かしい天上の高い音の表現が使われ、また 低音の響きと呼応する高音の エコー等 が表わされている。リストの「讃歌」・・・ 1839年頃には作曲されていたとされるが 出版は1858年。
私は リストと ドレがリンクするように思える・・・

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こちらは、「天国編」天上の世界を駆け巡る姿が描かれている・・・

残念ながら これらの絵は ほとんど 日本で原画を見る事はできない。ドレの出生地 ストラスブールは かつてのローマ帝国だった。現在のフランス北東部 ストラスブールに行けば美術館でみられるようだ。

また、ダンテの「神曲」は 難しい作品とされているようだが 日本語訳にも素晴らしいものがある。平川祐弘の「完全版」が読みやすい。

9784309205496

また、抄訳といわれるが  谷口 江里也による 画集は 画期的な本である。

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演奏する時 イマジネーションをどう持つかにより 表現も変わってくると思う・・・

「巡礼の年 イタリア」より ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」