声優「フランダースの犬」喜多道枝(1935.3.11 – 2024.11.6)
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声優「フランダースの犬」喜多道枝(1935.3.11 – 2024.11.6)
2024年(令和6年)寂しくなった。増山江威子さん、小原乃梨子さん、大山のぶよさん、そして喜多道枝さんまで。作品は、子どもが楽しめる内容であっても実に深い内容を秘めている。
「フランダースの犬」で、主役のネロの他にアロア、ジョルジュ、ポール、アロアの母、ネロの祖父、ヌレットおばさん、ナレーター役を演じた。一人八役。特技:フランス語・ギリシャ語・朗読・謡曲という。他にも多くの声優を演じ、吹き替えでも人気を博す。『フランダースの犬』は、イギリスの作家マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー原作の児童文学で1872年発表。絵画をテーマとした貧しい少年ネロと老犬パトラッシュの友情を描いた。日本では早くから訳され、菊池寛(1929)、村岡花子(1954)らによるものがある。1975年(昭和50年)テレビ「世界名作劇場」(「カルピスまんが劇場」)でアニメーション化された。間もなく50年を迎えようとしている。これほど、日本人に愛されているテレビアニメはないだろう。私も影響を受け、大判のルーベンスの画集を持っている。
「カルピスまんが劇場」として放送されるにあたり、原作を日本風に多少、脚色された。あらすじはこうである。ネロは画家を志していた。原作では15歳となっている。ネロの家は両親が亡くなり貧しく、ミルク運びをおじいさんとしていた。パトラッシュは、労働犬として使役されていたが、金物屋に重労働をしいられていた。倒れていたところをネロとおじいさんが救う。おじいさんが床に伏し、ネロとパトラッシュはミルク運びに精を出した。ネロは、アントワープ聖母大聖堂のルーベンス(1577.6.28-1640.5.30)作の「聖母被昇天」を時あるごとに見、祈りをささげていた。本当は「キリストの昇架(1611頃)」「キリストの降架(1610頃)」を見たかったが銀貨を払った人のみ。おじいさんが亡くなってしまい、大家からクリスマスまでに退去を告げられ、帰るところがなくなった。クリスマスの前夜、大雪の降りしきる中、コゼツの落とした財布を届けにいった。そして教会へたどり着く。パトラッシュも、時をみてネロを追いかけた。偶然、月光が祭壇画を照らし、ネロの願いが叶った。アロアは、ネロを探しに雪の中歩くが、先に進めなかった。クリスマスを迎えた翌朝、大聖堂のルーベンスの絵の前で、愛犬とともに息絶えていたネロが発見された。
最終回でも声優の喜多さんは大役を全うした。声を使い分けエピローグは的確なナレーションだった。ネロとパトラッシュが力尽きる直前で『キリストの降架』を見上げ「ああとうとう見たんだ」 「ああマリアさま、僕はもう思い残すことはありません」ルーベンスの『キリスト昇架』『キリストの降架』については、「きっとルーベンスは、貧しい人に絵を見せたくないなんて思わなかったはずなのに」と言っていた。そしてネロとパトラッシュは『キリストの降架』の前で横たわり、「パトラッシュ、疲れたろう、僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ」を最後に。その後、天使が迎えに来て、昇天してゆく。ナレーション「ネロとパトラッシュは、おじいさんやお母さんのいる遠いお国へ行きました。もうこれからは、寒いことも、悲しいことも、お腹のすくこともなく、みんな一緒にいつまでも楽しく暮らすことでしょう」・・・「死は終わりではなく天国への凱旋」というけれど祈る事しかできません
アントウェルペン聖母大聖堂は特に日本人観光客多いが現地として『フランダースの犬』の事をほとんど知らない。アメリカでは放映された時、その後のストーリーが追加された。協会で助けられアロアと結婚し、幸せに暮らすとした・・・
2010年3月、世界名作劇場放送35周年を迎えた日本アニメーションは、本作品に登場するパトラッシュの名を冠した「パトラッシュ基金」を発足、盲導犬育成普及事業の支援を開始した。
「キリストの降架」キリストが磔刑にされ息絶えた。十字架から降ろされる場面。聖母マリアがすがりつく。
劇場版(1998)では、岩代太郎が音楽を手掛けている。
プロフィール
- ☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー ピアノテクニシャン なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ