マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」~20世紀の交響曲~


マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」~20世紀の交響曲~
グスタフ・マーラー(1860-1911)は、ウィーンフィル・ベルリンフィル・コンセルトヘボウという世界最高オーケストラを指揮した。ピアニストとして卓越していた。作曲もしていて「交響曲の大家」とされている。歌曲も作曲している。大部分が交響曲であり、10曲と「大地の歌」である。「第九のジンクス」は、交響曲第9番をつくると死ぬというベートーヴェンにあやかってそう囁かれた。マーラーは交響曲第8番「千人の交響曲」を完成、初演し、最大の成功をおさめた。これが生前で初演できた最後の交響曲だった。
ベートーヴェンにリスペクトし、第9番をつくるまえに「大地の歌」(全6楽章)を作った。これは声楽つきの「交響曲」だが連作歌曲という位置づけでもある。完成はしたが、初演の前に死去。その後、純楽器の「交響曲第9番」を作曲。4楽章で完成しているものの最終楽章は完成度が薄いと疑問が出ている。これは、後で手直しするつもりだったらしい。これも初演できなかった。第10番はスケッチが第5楽章まで済んでおり、第1楽章は浄書されていた。このため、補筆版で完成し、演奏・収録されたりしている。
マーラーのオーケストレーションは前衛的で宇宙を形成している。第1番「巨人」の第4楽章や第2番「復活」の第5楽章の響きは破壊的にもみえるが美しいファンタジーである。ベートーヴェンが19世紀の交響曲を残したとすれば、マーラーは20世紀の音楽そのものだ。それは破壊に対する抗い。第1次世界大戦がはじまる前の不穏な空気。
そのなかで第6番「悲劇的」はトラジックであり「悲愴」パセティークでない。長調→短調【運命のモチーフ】が全体を統一。珍しい楽器の使用。鐘(カウベル)、チェレスタ、シロフォン、ハンマー、鞭・・・楽曲は、動機的主題が複雑に絡み合う。娘の死、自分自身への不安。
第1楽章の行進曲風:戦闘的なリズム。第2楽章はスケルツォ:いびつで不安定。第3楽章のアンダンテ:牧歌的で素朴な旋律。音の洪水に埋もれながらも森を探す。角笛の悲壮な音と狂ったような高音部の弦、低音部のうめき。カウベルが登場。自分が何者なのか自問自答しながら自然に喜び、しかし人生は・・・ いつの間にかの静けさで人生を謳歌できたのか。第4楽章のモデラート:25分もある大規模なもの。序奏からハープが登場。2台のティンパニ。そして終わりがあるようにみえて「終わらない」(余韻を残す)。木槌(ハンマー)が登場。初演では5回登場するはずだったが、最終稿では2回とされている。音楽では一瞬なのだが、実際のライブでみるとハンマーを持ち上げ打力する迫力が凄まじい。おそらく3回目は自分自身の死ととらえ、登場させなかった。私は、この木槌がキリストが磔刑にされた場面と重なった。受難=悲劇である。アルマの不倫に苦悶したのか。最後の一撃が哀しい。
ハンマー聴き比べ ニコ動 https://www.nicovideo.jp/watch/sm8339571
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- ☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー ピアノテクニシャン なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ
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