ブラームス 11のコラール前奏曲Op.122「おお世界よ、われ汝より去らざるをえず」


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Brahms ブラームス O Welt, ich muss dich lassen 11のコラール前奏曲 Op. 122
「おお世よ、われ汝より去らざるをえず」から第1曲 Mein Jesu, der du mich 「イエスよ、われを導きたまえ」

ブラームスは、少ないがオルガン曲を残している。初期の時代と、晩年にあたる。
初期は、母が他界した時。その頃は、ドイツレクイエムも作曲している。そして1896年、クララが亡くなった。知らせが遅れ、かけつけたが葬儀の後だった。「この世ではすべてが虚しい。私が本当に一番大切な人を今日、葬ってしまったのだ」大きな衝撃を受けた。ブラームスの「秋のソナタ」、ブラームスに残されたのは1年だった。
ブラームスは 第11曲「おお世界よ、われ汝より去らざるをえず」で筆をおいた。

コラール前奏曲とは、バッハの時代、新教プロテスタント=ルター派教会の賛美歌の前に導入する曲。ルターは、ラテン語でなくドイツ語を用いるべきだと主張する。賛美歌が必要なため、バッハが支えとなり宗教曲が生み出された。それから100年経ちバッハの音楽は、メンデルスゾーンによって復活し、発掘され研究される。コラール前奏曲は、演奏会用に変わっていったと考えられる。

ブラームスは、コラール前奏曲を何のために作曲したのか。それは、クララへの追憶と自分のために。敬愛するバッハに尊厳をいだきながら、オルガンという楽器に託した。

全11曲だが、同じ曲名のものが2曲づつある。これは、バッハ的に考えてみる。「音楽の捧げもの」や「フーガの技法」においてコントラブクスト1、2など変奏的に示している事から「鏡像」とするのか、それとも「続編」としてみるのか 興味深い解釈になる。

よく聴いてみよう。

第1番 Mein Jesu, der du mich/イエスよ、われを導きたまえ
第2番 Herzliebster Jesu/最愛のイエスよ
第3番 O Welt, ich muss dich lassen/おお世界よ、われ汝より去らざるをえず(1)
第4番 Herzlich tut mich erfreuen/心よりの切なる喜び
第5番 Schmucke dich, o liebe Seele/ああ愛する魂よ。汝を飾れ
第6番 O wie selig seid ihr doch/おお、あなたはなんと至福なのか
第7番 O Gott, du frommer Gott/おお神よ、慈悲深い神よ
第8番 Es ist ein Ros’ entsprungen/一輪の薔薇が咲いて
第9番 Herzlich tut mich verlangen/わが心の切なる願い(1)
第10番 Herzlich tut mich verlangen/わが心の切なる願い(2)
第11番 O Welt, ich muss dich lassen/おお世界よ、われ汝より去らざるをえず(2)

私は、特に1曲目が ブラームスの本意を示していると思う。

第1曲 Mein Jesu, der du mich 「イエスよ、われを導きたまえ」
ブラームスの円熟期から晩年に「諦観」の技法が。つまり、動機を丹念に織りなしてゆく、古典的な手法。地味であるが 情緒が深く刻まれ 聴く人にしみじみと感動を抱かせる。そこに無駄はほとんどなく曲のどこかの素材の音である。また、カノンのように追走し、変容して和声を入念に仕上げている。

コーダ 半音階的に動機を丹念に織りなしていく 16分音符の走句は途切れる事なく 曲全体を纏っている。

プロフィール

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nishikunn
☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー  ピアノテクニシャン  なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ