ベートーヴェン/ピアノソナタ第30番ホ長調作品109《晩年3作》


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ベートーヴェン/ピアノソナタ第30番ホ長調作品109《晩年3作》

ピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィア」作品106で、ピアノを超えるシンフォニックなとてつもない金字塔を打ち立てた。当時、誰も弾けるものがいなかった。難解の3楽章、長大なフーガなど。楽器泣かせ、出版社泣かせの作品。当時の楽器は、ベートーヴェンの強打に、演奏会にピアノが3台持ち込まれるなど耐えられるものでなかった。モーツァルトの時代と違い民衆のための音楽を神が書いた。それがベートーヴェン。出版社は売れるはずがないと嘆くが、本人は自分の芸術のために書いたのだと。これ以上の作品が誰が書けるか。ルドルフ大公に献呈。ベートーヴェンの天才ぶりは、この作品の第3楽章の冒頭の2つの音の修正に対して、半年前に楽譜を提出したのに、拘りをみせている事だった。

フルートまたはバイオリンの伴奏を持つピアノのための10の主題と変奏 Op.107(1820年)、25のスコットランドの歌 Op.108(1818年)を経て
ピアノソナタ第30番ホ長調作品109 晩年の3作がはじまったのだった。これらと「ミサ・ソレムニス」作品123や交響曲第9番ニ短調作品125などが並行されていた。

シューマンの「交響的練習曲」への影響も考えられる。ブラームスのピアノソナタ第3番の第1楽章の展開部や第2楽章の第1主題などへの影響が見られそう。
当時のピアノは最低音のFまでだったが、より下のD♯のキーが登場し音域が拡大している。ちなみに、第31番変イ長調では、さらに下のCのキーが登場している。
きっと新型のピアノでベートーヴェンは作曲をしていたに違いない。

 

この曲は、第3楽章の主題にこそ焦点がある。幻想曲的に構成されている。

第1楽章 4分の2 ホ長調 何でもないような G♯ B E G♯ C♯ E F♯ G♯ と走句
右手は、長3度 4度 長3度 4度 長3 4度 5度 6度(転回3度)
左手は 5度かオクターブ(8度)かのいずれかである。
途中終止でもう9小節目で第2主題は即興的に奏されるべき。アタッカで第2楽章へ

第2楽章 4分の3 ホ短調 スケルツォ フォルテで悲劇を告げる 運命的な楽想。ベートーヴェン特有のリズム。しかし、流れがつくられ武骨な感じでもない。

第3楽章 4分の3 ホ長調 主題と6つの変奏 テーマは16小節だが、前半と後半に分かれる。バッハのゴールドベルク変奏曲を参考にした作品。G♯ E C♯ D♯ B G♯ ・・・
主題  4分の3 16小節 対位法的で広がりを感じるテーマ
変奏Ⅰ 4分の3 32小節 ワルツ ベートーヴェンらしいカンタービレ。
変奏Ⅱ 4分の3 32小節 前半 左手、右手の両手でバランスよく音楽を奏で、後半は重音のシンコペーションが特徴。
変奏Ⅲ 4分の2 32小節 対位法で 左手の走句とスタッカートが特徴。
変奏Ⅳ 8分の9 32小節 アリア風で低音部を謡わせることが大事。
変奏Ⅴ 2分の2 40小節 フーガが登場。凝縮された音楽。躍動が大切。
変奏Ⅵ 4分の3 35小節 + 回帰 主題 16小節 主題の伴奏型が 4分音符、8分音符、16分音符、トリルに発展。右手の9の和声が印象派に
熱情ソナタの第2楽章のような左手の動きが。

これが 意表をつく第1楽章 2つの主題からなり 即興的に弾かれるべき

それに対し 決然と打ち叩かれる第2楽章の主題。運命のよう。

第3楽章は 主題と6つの変奏からなる。主題は、アリアのよう。

第2変奏 両手で音の流れをつくる。シューマンの交響的練習曲によく似たところがある。

第3変奏 主題が右手で、左手の交互にあらわれ スタッカートが印象的にしている。

第4変奏 8分の9 ゆったりとしていて無窮動ともいえる徹底した動機活用が穏やかな楽想を生んでいる。

第5変奏 フーガ 決然たる動機で ベートーヴェンも得意にしている。型にはまらないよう、小節数を拡大し コーダへ引き継いでいる。

第6変奏 + 再帰 テーマ 音符が細かくなる。

左手の低音部のトリルが印象。

最初のテーマがこのように変化するのは、ハンマークラヴィアを書き上げたベートーヴェンだからこその創作力(芸術)。

プロフィール

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nishikunn
☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー  ピアノテクニシャン  なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ