「オーベルマンの谷」リスト 巡礼の年 第1年「スイス」より


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「オーベルマンの谷」リスト(1811-1886)ハンガリーの作曲家 ピアノの魔術師
ラ・カンパネッラ「鐘」ハンガリー狂詩曲第2番 愛の夢第3番など 愛すべき名曲を遺した。
優れたピアニストで、作曲家となり 後に僧侶となる、数奇な運命。作風は、ヴィルトゥーゾ的でアクロバットな派手な音使い。
これまでの作曲家になかった、音符の数が極端に多く 超絶技巧を要する作品が少なくない。ロマン的で宗教的でかつ前衛派でもある。
ソナタ形式からの脱却、交響詩の確立、国民音楽派への先駆けとなった。

巡礼の年 Années de pèlerinage は、ピアノ独奏曲で各曲に「タイトル」がありポエティックな組曲のようなもの。各地を訪問し霊感を得、スケッチしたもの。
20代の1835年から書きはじめられ晩年まで続けられている。
第1年「スイス」9曲 1842年 初版 1855年 改訂
第2年「イタリア」7曲 1858年 出版 補遺「ヴェネツィアとナポリ」3曲 1861年出版
第3年 7曲 1883年 出版

私的におすすめは
第1年 第1曲「ウィリアム・テルの聖堂」第6曲「オーベルマンの谷」
第2年 第3曲「サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ」第5曲「ペトラルカのソネット第104番」第7曲「ダンテを読んで」
第3年 第2曲「エステ荘の噴水」

さて、第1年「スイス」1835年から36年にかけてマリー・ダグー伯爵夫人と共にしたスイスの印象を表現したもの。
第1曲「ウィリアム・テルの聖堂」 / “La chapelle de Guillaume Tell”
第2曲「ワレンシュタットの湖で」 / “Au lac de Wallenstadt”
第3曲「牧歌」(パストラール) / “Pastorale”
第4曲「泉のほとりで」 / “Au bord d’une source”
第5曲「夕立」 / “Orage”
第6曲「オーベルマンの谷」 / “Vallee d’Obermann”
第7曲「牧歌」(エグローグ) / “Eglogue”
第8曲「郷愁」 / “Le mal du pays”
第9曲「ジュネーヴの鐘」 / “Les cloches de Geneve”

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「オーベルマンの谷」についての考察。セナンクールの文から

Que veux-je? que suis-je? que demander a la nature? ・・・ 【原文】

what do I want? What am I? what can nature ask? ・・・【英訳】

自分は何を欲するのか? 自分は何者か? 自然には何を求むのだろう? ・・・
無用の人。・・・フランスからスイスに行き、アルプスの自然を受容した。孤独な山歩きする者。
人間は、思いがけないが(消えうる)存在である。

セナンクール(1770年11月16日-1846年1月10日 フランス)の小説『オーベルマン』Etienne Pivert de Senancour Obermann (1804)
『オーベルマン』は発表当時、『若きウェルテルの悩み』にも匹敵するベストセラーになった。

この絵で オーベルマンの谷に辿りつけるだろうか。

最も演奏時間が長く14分。ソナタ形式で構成されているが、遠隔短調が多くファンタジーに富んでいる。

ミステレオーソ 和音の不協和(増音程など)とチェロで奏するイメージのテノール。

そして、調性不明なこの音の流れ。再び、最初の主題が出てきて レジタティーボでテンポを緩め 次に入る。

ハ長調の明るい主題が登場。右手のアルペジオなど 華麗で柔らか。再び、レジタティーボが次の緊張感とのメリハリをつくる。

左手が不気味で不穏なトレモロ。右手が打ち出すオクターブ。アパッショナートとアジタート。その後、左手の交差が出て激しさが増す。

オクターブの連打によるパッセージが強烈。右手高音のトレモロが降ってくるが、左手に主導権がある。デミニッシュの和声が続き 鎮まり 次へ。


今度は、主題がバラード風に変容する。

コーダ オクターブの連打が迫力を増し発展。あくまで 重たくならずに さらっと弾きぬける事だが メリハリのアクセントと 効果的なペダルを忘れないように。

最後、オクターブの連打 上昇は讃歌を謳う。小休止のあと、このストーリーの余韻を残す和音で終止。

プロフィール

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nishikunn
☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー  ピアノテクニシャン  なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ