ベートーヴェン/ピアノソナタ第31番変イ長調「嘆きの歌」Klagender Gesang


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ベートーヴェン/ピアノソナタ第31番変イ長調作品110

強音でなく、静寂の世界や節約・凝縮された構成 のだめカンタービレの「嘆きの歌」の場面で使われる。

ベートーヴェンのピアノソナタ32曲の中で 後期ソナタ 30番 31番 32番 の2つ目にあたる。
ブレンターノに霊感を得たのでは。29番の「ハンマークラヴィア」で すべて出し切った感があるが、
さらに進化した 30番 31番 32番 の深淵なる世界へと昇華している。

30番は、はじめ 水の流れるがごとく 前奏曲のような1楽章で 2楽章のスケルツォを強調している。3楽章は、ファンタジックなテーマの変奏曲で
ドビュッシーを思わせる未来的な音の扱い。32番は 2楽章のソナタで 1楽章は徹底したフーガが決然と表される。2楽章は変奏曲~嘆きの歌~浄化された高い音と弦楽
を思わせる。その中にあって 30番は個性的なソナタで 幻想曲と呼んでもよいのではないか。

ベートーヴェンは気づいていた。ピアノソナタが限界に来ているのを。形式を重視するのは悪くないが、おきまりの処理で、正直なところ自由に作曲できない。
もちろん 工夫は必要だが。テーマを謡う第1楽章。間をとりゆっくりテンポの第2楽章。元気で滑稽なスケルツォの第3楽章。ロンドとコーダの第4楽章・・・
完成した楽章「組曲」を関係調でつなぎとめたものではソナタというには乱暴だ。調性が「関係調」のみだと自由に欠ける。

そこで、新しいものを打ち出す。楽章の最終音に明らかな変化。最強音では終わらず、次の楽章につなぐ役目。
楽章間の拍手を嫌ったともとれる。最初の楽章で使った音が、他の楽章でも変容し登場、終楽章での回帰など効果を高める。
終楽章での予想しない調性への転調はファンタジックになる。長いコーダは緊張感があり、演奏効果が高い。
なお、このソナタは「献呈者なし」となっている。通常は「献辞」が添えられているはずだが・・・どうなったのか。
自分のために書かれた唯一の作品と言えるかも。



Beethoven: Piano Sonata No.31 /Kate Liu



第1楽章 冒頭の4小節と6小節 これがこの楽章を支配する。右手・左手を交換するかたちなど無駄がない構造物のよう。
流れるような32音符のアルペジオが流麗である。素材の使い方が絶妙。短調のバスの動きは歌謡的である。



流れるような32音符のアルペジオ ドイツ語表記

 



短調 シンプルでのびやかな旋律が寂しさを。左手のバスが謳うところは丁寧に。
今度は 左手に32分音符のアルペジオにとってかわる。



第1楽章の最後は、最強音で決然と終わらない。次の楽章につなぐ表示。アタッカのような感じ。

 

第2楽章 スケルツォ 4分の2拍子 ヘ短調 4小節単位で括る。武骨な感じが否めないが これがコンパクトにできている。
突然終止 シンコペーションリズムの使用など これだけで充分 構成をなしている。
中間部 変二長調 変ト長調の和音が出てくる。何か苦心をしたのだろうか。リズムに特徴はあるものの 旋律的には感じられないが、無駄に長くせず
次の楽章へと導く。



第3楽章 8分の6拍子 変イ長調 「フーガ」 レジタティーボ 幻想曲風

コーダ「発展形」となり、盛り上がりの前にフーガの世界。パストラーレ風で舟歌(漂流している哀しみ)を組み合わせた。このフーガは、バッハとは違う。
ベートーヴェン風カノンというか。

変イ短調『嘆きの歌』アリオーソ・ドレンテ(Klagender Gesang) バッハの『ヨハネ受難曲』の「Es ist vollbracht」と関係があるかも。
ベートーヴェンの嘆きは人間的に感情を伴うもの

変イ長調 フーガ

ト短調 アリオーソ 「疲れ果て、嘆きつつ」(Ermattet, klagend)バス、アルト、そしてソプラノ

ト長調 フーガ 上行形のフーガ (前出のフーガの反行形)「次第に元気を取り戻しながら」(Poi a poi di nuovo vivente)と記した

変イ長調 コーダ

コーダ 右手のアルペジオが左手にとって代わられて推進する。フーガで出てきた4度進行をコーダでは6度の跳躍で応答している。(オクターブでの転回または反行形)
左手のアルペジオが劇的に ストレットのように高めていく。最強音の変イ長調のアルペジオは、勝利を得、天にも昇るよう。
上から下へ降りてくるアルペジオと、がっしりと掴んだ和音の響きで終えている。

終わった感じがしないのは、32番があると言っているのか、ベートーヴェン。


レジタティーボ 幻想曲風 小節線はもはやなく めまぐるしく転調する Aの連打は クラヴィコードを想定して書かれている。
等分でなく フレーズをよくみて。休符こそ入ってないが そこには「間」がある。


変イ短調『嘆きの歌』アリオーソ・ドレンテ(Klagender Gesang) バッハの『ヨハネ受難曲』の「Es ist vollbracht」


変イ長調のフーガ バス、アルト、そしてソプラノが重ねていく。


ト短調の アリオーソ 「疲れ果て、嘆きつつ」(Ermattet, klagend)



ト長調のフーガ 上行形のフーガ (前出のフーガの反行形)「次第に元気を取り戻しながら」(Poi a poi di nuovo vivente)イタリア語で記した



 

フーガの高度な処理。ト短調に変わり、付点のリズムが一層 難しくさせている。苦悩がうかがえる。



ピアノソナタは32曲あるが このような終わり方は この曲しかない。考えぬかれた構成。第1楽章に出てきたアルペジオが最後にこのようなかたちで出てくる。
終わった感じがしないのは、32番があると言っているのでしょう。

プロフィール

nishikunn
nishikunn
☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー  ピアノテクニシャン  なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ