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ピアノソナタ第20番 イ長調 D 959(遺作)
シューベルト(1797年~1828年)の晩年の1828年の作品。不死鳥の如くあらわれた 3つのピアノソナタ。
実は、ベートーヴェンが1827年3月に亡くなったとき、シューベルトは変わった言葉を口に出していた。
まさか 本当に 自分にふりかかるとは。
シューマンが シューベルトの兄を通じて 遺稿の整理にあたっていた時
交響曲などの楽譜が発見された。交響曲第9番ハ長調「ザ・グレイト」(現在は 8番?)はその一つ。長大な作品とされた。
ベートーヴェンの第九よりは短いが。その曲想の息の長さが そう捉えられた。
そして、ピアノソナタ3部作もそう(遺作)。死後10年経った1838年に出版された。
これが 自筆譜。ソナタ第20番イ長調D959 第2楽章の冒頭。
シューベルトは 最後の年の1月から9月までに 大作を完成させている。ピアノトリオなども。
2台のための幻想曲へ短調D940 や 3つの小品(即興曲風)などがあるが あまり演奏されることはない。
完成しているものだけでも 演奏時間は10時間を超える。
シューベルトは22番のソナタを書いたであろうか。そう考えると この3部作は 大きな意味を持つ。
ピアノソナタは 19番 30分 20番 40分 21番 45分。
速筆・・・ この筆致から 何を読み取るのだろう。
ピアノソナタ第20番 イ長調
Alfred Brendel – Schubert – Piano Sonata No 22 in A major, D 959
第1楽章 2分の2 イ長調 新しい響きを発見した。ユニゾンは 落着きを取り戻している。
それと裏腹に半音階的な和音でぶつかる響きは、厳そかで不思議なものを提示する。
中間部 機関車の走行のような動機 ベートーヴェンの31番もそうだ。1814年ごろにスチーブンソンがイギリスで蒸気機関車を走行させている。
ブラームスやドヴォルザークは関係した響きを作品に投影しているが。
第2楽章 8分の3 嬰へ短調 「さすらい人のうた」終止短調で ほんの少しだけ抜け出せたかなという箇所が存在する。
シューベルトの彷徨う姿。人は、なぜに孤独なのだろう。
こう考えることもできる。人は生まれる時は「場所を選べない」が死ぬ時は「選べる」。
死に方を知らないから、生きながらえている。それは「寿命」と呼べるものなのであろうか。
先人に私たちは生きている間は逢うことができない。が、肉体が死んだ時、あの人のもとにいける。
魂はずっと生きている。そうでなければ、人間に意味などないのだから。
浮遊するシューベルト。淡々と歩みゆく。その道は突然開けるが「夢」の中である。
不安定な調性。幻想曲風。トリルあたりから 徐々に激しさが加わってくる。嬰ヘ短調の激烈な音の扱い。
これまでになかった。「魔王」のような熱に冒されインフルエンスに苦しむ。
シューベルトが熱にうなされ悪魔的なものが吹き出した。『インフェクション(感染)』と恐れられる部分。
叫び。何に対してなのか。吐露を感じる・・・ 献呈者はなし。自分に対しての慰めなのかもしれない。
再現部で少しでも立ち直れるなら 第3楽章に進めるが あまりにも重たくて哀しくて。
文学家 プリーモ・レーヴィは ナチス収容所から奇跡的に生還できた。殺戮を目のあたりにし、その人の分までも生きながらえる事が彼の使命。
ナチス収容所の残酷さを伝える文学を多く書く。しかし、突然自分で命を絶った。
生に対して肯定的であった彼。残酷さを描くためには心を鬼にしなければならない。
悪の心を抱いたのか、発作的に死を選んでしまった。
死の6か月前、生前葬を行ったK社長は、会に集まった千人に一人一人と握手をし「ありがとう」と言った。ある意味 勇気の要る事だけれども。
彼は花道を築いたのだった。人は生きている時にしか共感しあえない。
それは体験というもので、甘い、酸いなどの感情だけでなく人としての意識、霊的な無意識も遺るもの。
最後のソナタ第21番の第2楽章は、さすらい微笑みうかべ旅立ってしまう。瑞々しいシューベルト。
ソナタ20番の第2楽章は「叫び」があり、そして慰めがそこにある。
第3楽章 4分の3 イ長調 ピアノソナタのスケルツォというより、ピアノトリオを想起する活発な動き。気分をかえて。
第4楽章 4分の4 ロンド イ長調 愛らしい主題を変奏してゆく。歌心が溢れている。半音階的な響きはなく明瞭。
優しさと元気。コーダにはアルペジオとオクターブの跳躍で、活気を見出している。
プロフィール
- ☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー ピアノテクニシャン なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ
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