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ショパン/バラード第1番ト短調作品23


ショパン バラード第1番ト短調作品23

フィギュアスケートでのプログラムで 浅田真央選手や 最近では 羽生弓弦選手が使用している。
映画「戦場のピアニスト」では、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、シュピルマンが、戦災から 避難しているところをドイツ人陸軍大尉ホーゼンフェルトに見つかり、その場で「バラード第1番」を演奏した。ホーゼンフェルトはポーランドの魂をみた。ホーゼンフェルトもかつてピアノを嗜んだ一人。いたく感動し、彼の命をたすけ支援する。

バラードは 8分の6 4分の6拍子等の 物語風の自由な楽曲形式。ブラームスなども作曲している。
ショパンの心境は察するにあまりある。20歳の時 ピアノ協奏曲第2番の演奏会の成功させ 第一歩を歩んだショパン。ウィーンにわたるが フランスに赴いた。ポーランドは 平らな国。中欧最大の農耕国、繊維、鉄鋼の産地でもある。ポーランド人は 世界でも唯一愛国の精神を有する。古代からバルト3国 ロシアとの関連は密接なものがあった。紛争が絶えなかった地域でもある。フランスによるウィーン体制や ロシア・ドイツに占領されてきた歴史がある。ドイツナチスによるホロコーストは大変な苦労を強いられた。

実際、ポーランドに滞在し話を聞くと、都市部に英語が通じるところがある。教育機関で外国語に英語を選択できるようになっている。感情からすると ドイツ語 ロシア語に抵抗がある人も少なくない。が、未来志向でかつ視野がグローバルなポーランド人が凄いと思う。

さて、バラード一番は 次の構成とみることができる。序奏 A(ト短調) B(ヘ長調) A´(イ長調)B´(ホ長調)C トリオ(スケルツォ) B´(変ロ長調)A´(ト短調)D コーダ

ショパンは国民的詩人アダム・ミツキエヴィッチの詩を作曲のきっかけとした。概略「リトアニアは、十字軍に敗れ独立を失った。王子コンラード・ワレンロットは捕虜になった。十字軍の首領に息子として育てられ、勇敢な騎士となった。彼は策略を図る。リトアニアの独立を企て作戦は成功した。が、彼は裏切り者として十字軍に処刑されてしまう。」

リトアニア  現在のvilniusにある教会 1569年から1795年まで存在した複合国家。広大な国の一つ。終末期には、スウェーデン・ロシア・オーストリア・ドイツの緩衝国となっていた。また、クラクフは ポーランドの古都、ワルシャワ、ウージに次ぐ第3の都市。1038年から1596年まで都として隆盛した。

 

オクターブから序奏がはじまる。主題1は物悲しい物語のはじまり。夢想的な楽想でもある。

アジタート気味な楽想は「闘い」とでも言えようか。左手のリズムが強調される。2分の2のはやいプレスト アルペジオが波打つが 穏やかになると 4分の6の へ長調 穏やかな「主題2」

「主題1」に回帰するがイ長調。緊張感を持って憧れに展開してゆく。重音のホ長調「主題2」


ホ長調 オクターブで熱く語るが スケルツォがトリオ的に挿入され 左手のアクセントに注目。

レジェロなモーションが頂点に達すると降りてきて「主題2」変ロ長調でカンタービレ風に奏される。

アルペジオでテンポが緩められる。このあたりの処理がショパンの絶妙な表現で 難しいところ。「主題1」が回帰。しかし、陰鬱な主題が悲劇を予感する。次第に感情がせき込んで。爆発する跳躍の和音で示され 次のプレスト・コン・フォーコへ移行する直前の5連符を大切に。ショパンの入念な処理がなされているところ。ここから2分の2 アジタートに入る。奈落の底を表現。フレージングを大切にしないと台無しになる。

激しくアクセントが強い。不協和音的な音も混じり 激しさを交え強めていく。最高音の和音が下降 左手、右手の交差で効果的に降りてくる「よく音の響きを聴くこと」。

下のGから最高音まで駆け上がり パッセージが滑り落ちる。最初の「主題1」が6連符に変化。「何かを問うような」動機。スケルツォの2番の最初にも雰囲気が近似する。劇的な短調のスケールで応え 激しさを表現。

最後は、最強音の右手と左手のオクターブが互いに呼応し、オクターブで主調に降り立ち 決然たる音で 締めくくる。

Kate Liu の最初のユニゾンや最後のユニゾンの全身を使った一音にため息と凄みが出ている。