信太森葛葉稲荷神社(しのだのもりくずのはいなりじんじゃ)
葛の葉(くずのは)は、白狐の名前。信太妻、信田妻(しのだづま)とも。また 安部晴明の母「葛の葉」を主人公とする人形浄瑠璃および歌舞伎の『蘆屋道満大内鑑』(あしやどうまん おおうち かがみ)に登場する。
多くの社を祀る信太森 こんもり古墳のようになっている。狐塚があったかもしれない。姿見の井戸からは 何ともいえない気が。5月~6月頃には 楠木のいい香りが立ち込めるだろう。楠は 精神を癒す成分が含まれている。この樹、樹齢は2000年とも。この木に抱かれると 護られるような気がする。
白狐の話だが、人は悪さをするとしっぺ返しがくる。動物は神の使い。自然や鳥獣の霊的な力が人を護ってくれる。
奈良時代 和銅元年(708年)旧二月初午の日に元明天皇が楠の神木の化身である白龍に対して祭事を行ったことが縁起となり、信太森神社は神木を御神体とし建立され、その後、信太森葛葉稲荷神社として知られるようになった。末社に楠木神社・厳島神社・白狐社を持つ。安倍晴明縁の社。
千枝の楠
本殿左手にそびえる樹齢2000年といわれている楠の大木(2003年和泉市指定天然記念物に指定)。花山天皇が熊野行幸の際「千枝の楠(ちえのくす)」の称を賜る。また、清少納言の草紙に「森は信太森」と記して以来、和歌の題となっている。根本から二つに分かれていることから『夫婦楠』と呼ばれており、夫婦円満・良縁成就などのご利益があるとされている。葛の葉はこの神木から現れたと伝えられている。
姿見の井戸
保名に助けられた白狐が、葛の葉に身を変えた際に、鏡に代えて姿を写して確認した井戸。葛の葉が無事にこちらの森に帰りついたことから、旅に発つ前にこの井戸に姿を写しておけば無事に帰って姿を写すことができると言われている。
狐の碑
御影石に「恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉 」の一文とキツネに戻った葛の葉の姿が彫られている。
~「葛の葉物語」~安倍晴明の母ゆかり
昔、村上天皇(10世紀)の頃、摂津国に安倍保名(あべのやすな)がいました。 ある日、信太大明神に参詣し、禊ぎをしようと池の畔にたっていると、狩人に追われ傷ついた狐が逃げてきました。保名は、狐をかくまい逃がしてやりました。追ってきた狩人たちは、保名をさんざん責め、深い傷を負わせてしまいました。傷で苦しんでいる保名のもとへ、若い女がたずねて来ました。女の名は、葛の葉といい、保名の傷の手当をしました。
やがて、保名の傷も治り、二人がともに暮らすうち、かわいい童子も誕生、しあわせな日々がすぎていきました。六年目のある秋の日、葛の葉は、庭に咲く美しい菊に心をうばわれ、自分が狐であることをつい忘れ、うっかり 正体のしっぽをだしてしまいました。童子にその正体を見つけられた葛の葉は、ともに暮らすのもこれまでと、「恋しくばたずね来てみよ和泉なる 信太の森のうらみ葛の葉」
の一首を残して信太の森へと去っていきました。保名と童子は、母を求めて信太の森を探し歩きました。森の奥深くまできたとき、保名がふと振り向くと、一匹 の狐が涙を流してじっと二人を見つめていました。はっと気がついた保名は「その姿では子どもが怖がる、もとの葛の葉になっておくれ。」保名の声に、狐は傍らの池に自分の姿を映したかと思うとたちまち葛の葉の姿となりました。
「わたしは、この森に住む白狐です、危ない命を助けられたやさしさにひかれ、今まで、お仕えさせていただきました。ひとたび狐にもどった以上、もはや、人間の世界にはもどれません。」と、童子を諭しながら、形見に白い玉と箱を与え、最後の別れをおしみつつ、ふたたび狐の姿となつて森の奥へと消えていきました。この童子こそ、陰陽道の始祖・天文博士に任じられた安倍晴明(あべのせいめい)だったのです。
保名は書置きから、恩返しのために葛の葉が人間世界に来たことを知り、童子丸とともに信太の森に行き、姿をあらわした葛の葉から水晶の玉と黄金の箱を受け取り、別れた。数年後、童子丸は晴明と改名し、天文道を修め、母親の遺宝の力で天皇の病気を治し、陰陽頭に任ぜられる。しかし、蘆屋道満に讒奏され、占いの力くらべをすることになり、結局これを負かして、道満に殺された父の保名を生き返らせ、朝廷に訴えたので、道満は首をはねられ、晴明は天文博士となった。晴明は晩年、敦賀で天文の研究をおこなったとされている。
みたま石
本殿内に安置されている石。葛の葉が正体を知られ、保名の元を去ってこの社にたどり着き、悲しみながらこの石になったとされる。
子安石(安倍晴明遥拝の石)。子宝、安産を願う石。
梟(ふくろう)の灯篭
千利休作の灯篭。
滝行場
本殿裏手に池と滝行場と呼ばれる石組みの行場がある。現在は滝が無く、小さい池がある。
「菅原神社(菅原道眞)」、「大森神社(家船大神)」、「小竹神社」「八坂神社(須佐之男命)」「菅原神社(菅原大神)」、「水分神社(水分神)」、「十六善神社」、「篠田王子社(篠田王子)「舊府(ふるふ)神社」を合祀。和泉式部の歌碑や松尾芭蕉の歌碑などもある。