ショパン/バラード第2番 ヘ長調 作品38 作曲 1838年か 叙事詩「バラード」から 構想を得て 音楽にしたもの。ブラームスなども 遺しているが ショパンのバラードが 物語性が高い。タイトルに 調性をつけてないのは それなりに考えがある。シューマンに献呈した時は イ短調のコーダは付されてなく へ長調で終わっている。
構成 A ヘ長調 B 二短調 A’ ヘ長調 B’ 二短調 コーダ イ短調
バラード 背景に 詩人『ミッキェヴィッチ』の「ヴィリス湖」。概要は、リトアニアとロシア間に戦争が起き リトアニアは 十字軍に敗れ 独立を失う。リトアニアの深い森の中の湖には 神秘的な物語がある。戦争により、女たちは生きて捕らわれの身となるよりも 死を願って神に祈る。たちまち 大地震が 街も城郭も 崩れ 消え去った・・・(省略)
ショパンは マリア・ヴォジンスカと婚約状態であったが、破棄された。ちょうど この時期と重なる。ショパンは マリアとの手紙を 「Moja bieda(わが哀しみ)」として宝物にし 公にしなかった。ショパンは マリアとのやりとりを わが悲しみ Moja bieda とし
これを持って 大切にしていた。
うまくいかなかった原因は 諸処あるだろうが ショパンは 「革新的活動家」とマークされていたのかもしれない。ワルシャワではティトゥスと親友であり ウィーンまでは 一緒に来ている その後 二人は ティトゥスが祖国へ ショパンは 父の故郷である フランス へわたった。
A ヘ長調 コラール風の 穏やかな楽想が続く
B 二短調 嵐の如く 激しい アルペジオ(下降音型 と 上昇音型)
A’ ヘ長調 回帰するコラール風の楽想だが テノールが声を添え メゾとのかけあいをする。
落ち着かない= 嵐の予感か そして 本当の悲劇が
B’ 二短調 嵐だが 先ほどよりも 激しさを感じる そして 城郭も破壊されたのか奈落の底へ
ダブルのトリルで 次のコーダへ
コーダ イ短調 agitato アジタート せきこんで 和音が密集 「隣の半音を打鍵する型は大変珍しく」 また 半音階や連続打鍵など 最後は 下降音型と 2オクターブにわたる 跳躍で 激しさを・・・フェルマータ クライマックスへ 今までにない音型が使われているが 左手がポイント
最後の数小節は バラードの劇的な終わりを示している。このような 終わりを予想できないところにショパンの天賦がうかがえる。
A 穏やかな 物語の初めと 牧歌的な和声 この後 凄まじい音型を予想できるだろうか。
無窮動的なものから生み出される2番。この2つ(AとB)の対比が著しいのがこの曲のよさである。
B 激しい部分
「バラード1番の闘い」の時以上の激しさ。城郭が崩れさるような。
気になるのは 右手と左手が 近接していくのに 強弱が逆であること。
右手は 弱めていく 左手が 強めていくこと もちろんフレーズの終わりは乱暴にならずに。
左手のパッセージが うねるように 楽器の共鳴関係からいくと
1小節目、バスのA 右手のAがあるので おのずと右手Eは響きが大きくなる。
同様 3小節目 バスのC 右手のC そして G
2段目 1小節目 Eフラット 右手のEフラット Bフラット
3小節目 はじめて 不協和音が出てくる。激しくぶつかる音程。バス Fフラット 右手 Eフラット
A’ 最初の楽想に戻るが テノールと メゾがかけあう部分が印象的。
B’ 激しい部分 先ほどよりも 跳躍が著しく 激しさを物語る。
デーモニッシュな和声 そして トリルからクレッシェンドしコーダへ
このような音型はあまり見たことがない。高い芸術性がうかがえる。マリアとの婚約破棄 ショパンの人生に どれだけの影響を与えたのか。このバラードもそのひとつ・・・
フェルマータの余韻の後 最後の数小節 バラードの劇的な終わり
ポズナンにある アダム・ミッキェヴィッチ公園のポーランドの国民的詩人 アダム・ミッキェヴィッチの銅像。 木々と比べると その大きさに驚く
ポーランド蜂起に多大な影響を与えた。ポーランド蜂起は、ショパンが激情の迸る作品を生み出す決定打だとなった。
革命のエチュード バラード1番 スケルツォ1番などが生まれている。