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ショパン/ピアノソナタ第2番「葬送行進曲付」


ショパン/ピアノソナタ第2番変ロ短調 作品35「葬送行進曲付」

フランスの社交界 サロンの音楽として洗練された ショパンの世界 憂いもある。

ショパンは ピアノソナタという形式に こだわっていなかった。
習作時代 17歳に ピアノソナタ第1番がつくられたが 生前出版はされなかった。この作品は 遺作となり 欠番となっていた 作品4に おさまった。なお、「葬送行進曲」は 1837年に作曲していた。マリアとの別れによる絶望がこの曲を書かせたのか。デルフィーナ・ポトツカとの恋とは 明らかに違う感情を往復させていたと思われる。

ショパンは ピアノ協奏曲の世界に夢中だったのかもしれない。事実 エチュード(練習曲)は、
コンチェルトのある箇所をモティーフにして曲ができているから。しかし ショパンのなかでは バラードと スケルツォなど 性格的小品の作品群を考えていたようだ。すでに、ピアノソナタは ベートーヴェンが32曲発表していることから シューベルト以降 ロマン派の作曲家は 性格的小品の世界へ投入することになる。シューベルトの後期 ヘ短調即興曲は ソナタとみることができるとシューマンは説いた。
ショパンは 24の前奏曲集 作品28 を作曲し スケルツォ変ロ短調 作品31 を完成させた。マリアと別れ ジョルジュサンドと共にしていく。次なる世界として 強力なメッセージの「葬送行進曲」

変ニ長調は柔和であるが その短調は 嫉妬深く 少し陰鬱な感も望めない。さらに このソナタは
半音階を多様、Ges ⇔F 、Des ⇔C  、B b⇔ A(旋律短音階)が 雰囲気を醸し出している。

変ロ短調に関連させる序章 スケルツォ フィナーレを新たに作曲し まとめたのが ピアノソナタ2番である。最初から ソナタをつくるつもりがあったのかどうか。シューマンは 「乱暴な4人の子供をソナタの名で無理やりくくりつけた」と評価した。たしかに 1楽章の動機と 2楽章の主題に 関連性はみあたらず 疑問が残る。が、3楽章 4楽章の 半音階のモティーフは関連性がみえるともとれる。

この曲は 協奏曲 に次ぐ 練習曲 数曲に匹敵するほどの難易度を誇る。パワーも必要だ。ショパンの作品のなかでは FF PPの対比がよく現れていて 聴きごたえがあるが リサイタルでの全曲演奏の機会が少なく ショパンの真価を伝える演奏を期待したいところ。

この曲を聴くと スペインの マジョルカ島 バルテモサ カルトゥハ修道院に 厳しい冬 住処としていた ショパンの姿を思う。ジョルジュ・サンドとの生活は ショパンの体にどれほどの影響を及ぼしたのだろう。「陽だまり」は、ショパンにとって 名曲を生む動機となった。

私が思うに 24の前奏曲集作品28と ソナタ2番「葬送」は どこか 音の扱い方に共通点がみられる。もしかすると ピアノ協奏曲の演奏のための 訓練として書かれた「練習曲」を作曲しているときに ショパンは新たな音の世界に気づいたのかもしれない。

素朴に詩的な作品群「前奏曲」が薔薇の香りを包んだものになったことをショパンは知っていた。「雨だれの前奏曲」も ここでつくられたのだ。

第1楽章「Doppio movemento」 2倍の速さで 動きを以て 序奏は劇的だ。これから 何かがはじまる・・・
ここでのポイントは 半音階のスライド。21小節からの動き。

続いて コラールの部分 変ニ長調 ショパンが好んだ調性 黒鍵を多用する。柔和な楽想。ここでも 半音階の伴奏音型が出てくる。

中間部 コラール風の楽想は ペダルにより せきこんで クレッシェンドし
鬼気迫るFF メロディアスでなく 感情を爆発させている。

右手が動機で力強く、左も動機でその絡みつく。ショパンの天賦の才能が発揮される。最初に出てきた半音階型の分散和音が彩りを添える。
リズムにアクセントがついていてこれが重要。低音のベースの動きが大切。響かせる。

再現部 移調し 主題をうたう コーダは、クライマックスを築く。終止形は 次の楽章への準備も。

第2楽章「スケルツォ」 ベートーヴェンはシンフォニーで使い「冗長でおどけた楽想」とされているが、ショパンのスケルツォは、「強烈な皮肉 瞑想と 感情を爆発させた音楽」 鋭い感性を要する。
左手の伴奏音型 Es E   ,Gis G は 半音階を使っているが 関連性は不明である。

中間部のコラール 歌謡性のメロディー 瞑想的でもある。

第3楽章「葬送行進曲」幼少の時にテレビゲーム「インベーダー」が流行ったが ゲームオーヴァーの音楽がこれ・・・ゲームのなか 速度が増しインベーダーが襲ってくる時の「連続4音」は 英雄ポロネーズの中間部 ベースの音。まさか ショパンの音楽を聴いていたとは。左手の音型の中でも F G♭の半音階が印象づけられる。1楽章の半音階と関連している。

中間部は コラール 静かにうたいあげる。行進曲とは、対照的。

第4楽章 presto 嵐のような楽想。オクターブのみ。無窮動は バッハの 平均律 プレリュードでもある。ショパンでは 練習曲の 作品10-1 10-2 25-1 25-6 25-12 ・・・ アルペジオ奏法からハーモニーを見出す。しかし この楽章をどう理解するのか。「前奏曲第14番」を参考にするとよい。この音に耳を傾け ショパンの真の吐露を見逃さない事。

最後から11小節目より 動きと和声が複雑。不思議で、ショパンにしか書けない作品。

以下は 前奏曲第14番