“Il Vento di Tango “タンゴの風~イタリア・アコーディオン奏者を迎えて~
3月6日(日)15:00開演 OCCホール(大阪クリスチャンセンター)
ジュゼッペ・シリアーノ(バヤン・バンドネオン)下川れいこ(ピアノ)八幡順(ヴァイオリン)北野知子(メゾソプラノ)レポートをお届けします。(許可を得ています)
ジュゼッペ・シリアーノ(Giuseppe Scigliano)
イタリアを代表するアコーディオニスト、バンドネオン奏者。幼少より、マリオ・カステラッチにクラシックアコーディオンを師事。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院を優等で卒業。イタリア国内外100公演以上演奏。2006年、ナンニ・モレッティ監督の映画「夫婦の危機」(caimano)のサウンドトラックを収録。現在、アヴェリーノのD.Cimarosa音楽院にて教鞭を執っている。また、PIF国際アコーディオンコンクールの審査員をつとめる。
下川れいこ(Reiko Shimokawa) 第8回カナダパシフィックピアノコンクール第2位。2014年、米・アリゾナ州でチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏、動画配信中。チェンバロ・フォルテピアノから現代曲、タンゴまで幅広いレパートリーを持つ躍進し続けるピアニスト。
2013年の Music in style 岩崎淑シリーズコンサートで シリアーノ氏との共演をみてきた。タンゴの世界を魅了された下川れいこさんがシリアーノ氏と共演。日本では 3か所 東京イタリア文化会館、ティアラこうとう、そして最後はOCCセンター、それぞれに素晴らしい演奏を聴かせていただいた。下川さんは、このリサイタルの半年前に世界的なアコーディオンの生産地であるイタリアのカステルフィダルトへ行き、作曲者のエンリコ・ブラッティ氏と逢い、シリアーノ氏と演奏をした。カステルフィダルトでは毎年、シリアーノ氏が審査員をつとめるPIF国際アコーディオンコンクールも開催されている。
プログラム
アストル・ピアソラ作曲 バンドネオン協奏曲 「アコンカグア」(1979)(Acc Pf)
エンリコ・ブラッティ作曲 エクスプレス組曲(2011)(ピアノデュオ版 世界初演)(Acc Pf)
アストル・ピアソラ作曲 “Vuelvo al Sur” 南へ帰ろう(1988)(Bn Pf)
“Tanti anni prima” アヴェ・マリア(1984)(Msop Bn Vn Pf)
”Che Tango Che”チェ・タンゴ・チェ(1984)(Bn Vn Pf) 他
OCCセンターは ピアソラファンをはじめ広域からの来場もあり、このライブへの関心がうかがえる。すでに満員、多くの人が待ち構えていた。オープニングは、ピアソラの「バンドネオン協奏曲」から。バヤンのリズムの利いた歯切れのよい音色と、ピアノの重低音がぶつかる激しい音楽だが、すぐさまピアソラ特有のカンタービレのフレーズにピアノがピアニッシッシモに対応するなど、実に調和のとれたハーモニーを醸し出していた。グルーヴ感のあるピアソラが聴けた。特に3楽章の激しさとバヤンのパッセージが協奏し 独特の世界をつくりだしていた。エンリコ・ブラッティ作曲の「エクスプレス組曲」第3楽章「南の風」は、8分の7拍子というダンスで温かいイタリアの雰囲気が伝わってきた。
後半、シリアーノ氏はバンドネオンを演奏、ピアノ、ヴァイオリン、それにメゾソプラノが入る4人編成でピアソラの「アヴェ・マリア」イタリア映画「エンリコ4世」の曲。ヴァイオリンの哀愁感漂う音色にバンドネオンの泣きの音色が絡み、メゾソプラノが慈悲深く歌い上げる。聖母マリアに祈る崇高な音楽。どのパートもなければならない。今しか聴けない瞬間の音楽、感動だった。
ピアソラのアヴェマリア ミルヴァの声が感動的。(熊本地震を忘れないで、陽の光りが灯るよう祈ります)
最後は「チェ・タンゴ・チェ」ピアソラとミルヴァは、奇蹟の盟友で伝説のステージを繰り広げた。このノリは、ピアソラのタンゴの中でも特に陽気である。バンドネオンを愛おしむ音楽「ここは日本?」海外で演奏を聴いている気分になった。アンコール2曲、「オブリヴィオン」「リベルタンゴ」しっかりと最後まで聴かせてくれた「タンゴの風」コンサートだった。
ピアソラ作曲 バンドネオン協奏曲 ブラッティ作曲「エクスプレス組曲」 シリアーノさんと 下川れいこさん
ピアソラの「アヴェ・マリア」 北野知子さん(メゾソプラノ)八幡順さん(ヴァイオリン)
シリアーノさん(バンドネオン)下川れいこさん(ピアノ)
1週間に3公演を精力的にこなし、日本最後の夜 打上 シリアーノさん夫妻 下川れいこさん夫妻 を囲んで 八幡順さん 北野知子さん と
OCCホール 四角く 上に響くホール 舞台は菱形のような 個性的なかたち。ピアノの存在が大きい。バヤンや バンドネオンに対し 対等に音楽を奏でるのは ピアノだから。バヤンの音を聴くことは 時々ある。アコーディオンだと音が残るイメージだが完全に切れている。このあたりが バンドネオン奏者でもある シリアーノ氏のテクニック。旋律をカンタービレにうたいあげる。ピアノの下川れいこさんも バンドネオンに対峙し 迫力のあるピアソラサウンドを築いていた。よく響いていた。