スケートで町田樹さんが使用した。シューベルト 即興曲作品90-3。今井顕氏の演奏が使われたとか。
シューベルト 30歳の時。この曲には 季節があらわれる。秋から 冬 冬から春 時間を超え 春から冬に戻り めぐる。1827年 3月26日 ベートーヴェンが亡くなり 葬儀に参列。ベートーヴェンとは一度だけ逢ったよう。「歌曲の王」はいうまでもないが 歌劇で人気を得るのは難しかった。当時 イタリアオペラが流行 ロッシーニの人気が高かった。
まさか 自分が この翌年に亡くなるとは思っていなかった。しかし ショパンの晩年もそうであるように。シューベルトの30歳の年 曲の構成に ファンタジーが溢れ出ている。今までにないような 形式から 拘りもしないファンタジー。2台のピアノための幻想曲ヘ短調 D940 はシンフォニック。バッハの対位法を駆使した事や ベートーヴェンのソナタを越えようとした30分以上を要する作品。傑作に値する。また、ピアノソナタ21番が作曲されている。今までの どの作品よりも 繊細で柔らかい響きに変わっている。2年前の作風と何かが違う。
人生の旅を 思うと「冬の旅」水辺に漂う 一枚の葉っぱ 新しい生命 羽ばたいていく。
この音楽 心の耳で聴き 弾く時、木の葉を揺らすような音にも気配りを。
柔らかさを持って鍵盤に触れてみてください。
さて、シューベルトで見逃してはならないものに 転調や経過部。動機が続くので 見落としがちなのだが、「色」の移り変わり。音型のまま変容していく 様相をみせる。
即興曲は 自由のままに書いた ファンタジー。この3番は 「無言歌」ともいうべき作品。
2分の4拍子は 珍しい。息がながい。しかも、3連符 は 揺れる楽想なので その表現をイメージ。左手は重要ですが あまり主張しないて 全体の響きを考えて 浮かび上がるように。内声は 鍵盤を深く押さえない ハーフタッチ ペダルの効用も考えて。バスと メロディーとのバランスが大切。
こういう曲は ウィーンの名器 ベーゼンドルファーが相応しい。
少し動いて 表情豊かに しかし 自制することも
再び 哀愁が よぎる ここは左手(バスを響かせて)
再び 長調に戻る コーダは この曲が sotto voce のような表情がうかがえる
テンポを緩めるというより 消え入るように最後の音につなぐ
シューベルトの曲は長大だというが 時間を超越した曲 聴いたあとに残るものの方を大切にしたい。
ホロヴィッツのシューベルト 即興曲第3番 こんな穏やかな演奏 素晴らしい。