ショパン/ピアノソナタ第3番ロ短調作品58


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ショパン/ピアノソナタ第3番ロ短調作品58(1844年)

円熟期の最大の傑作 精力を注いでつくられたソナタ。バラード4番 舟歌 チェロソナタと繋ぐ。ソナタの究極の完成型として他の作曲家を寄せ付けない。
霊感さえ感じる。リストがロ短調ソナタをつくっているが(1853年)影響を与えただろう。

第1楽章 4分の4 ロ短調 マエストーソ 決然たる動機が印象づける。優雅で感傷的な第2主題と対照的、美しい世界を彩る。
中間部は緊張が伴うがショパンの対位法の処理が見事に表れている。

第2楽章 4分の3 変ホ長調 スケルツォ 即興的で色彩がみえてくる。中間部は瞑想的。

第3楽章 4分の4 ロ長調 ラルゴ 夜想曲のようで悠久の時を奏でる。時間の長短をいうのではない。ショパン晩年の世界。

第4楽章 8分の6 ロ短調 プレスト 情熱的なロンドで決然たる動機が駆け巡る。1回目は 3連 2回目は 4連 3回目は 6連と
変容し強調される。コーダは長調となり高揚しレジェロなモーションが、圧倒的なテクニックを持って締めくくられる。

それは練習曲のようでもある。芸術性の高い音楽。ショパンのエチュードについてこのように謂われた事がある。
「手のねじれた人は、弾くべきでない。」そんな人に「24の前奏曲」をすすめたようである。

ドラクロワの描いたショパン像。私はむしろこのショパン像が真実だと。内面的には焔の如く燃え上がっていたがショパンの病が体を蝕んでいった。

Kate Liu – Sonata in B minor Op. 58 ケイト・リュウ シンガポール出身。

24歳 第17回ショパン国際ピアノコンクール(2015年)で第3位。マズルカ賞を受賞。米国、フィラデルフィアのカーティス音楽院で学ぶ。
カーティス音楽院といえば サミュエル・バーバー、レナード・バーンスタイン、ルドルフ・ゼルキン、ホルヘ・ボレット、アンナ・モッフォ
最近では、リチャード・グード ラン・ラン ヒラリー・ハーンなど 錚錚たる音楽家が誕生した。

 

 

第1楽章 ロ短調ではじまる。ソナタ第2番は変ロ短調の序奏が印象的だったが 3番では、直入に決然とはじまる。特徴である F♯ G B D のアルペジオが組まれている。
2番でも 半音階をスライドするアルペジオが使われていて、好まれているのだろう。変容しながら効果的に構成されている。

第2主題は コラール 穏やかで流麗なメロディ。第2番のコラールもよいが さらに装飾音などで彩りを添えている。バラード風にもとれる。

コーダ 第2番では、激しく叩き付ける連続和音だったが。第3番第1楽章は、アルペジオの流れ。それと対照的に 中間部は対旋律のみが強調されるので どう聴かせるか考えて弾かないとなんでもない音型となってしまう。ベートーヴェン的な構造的な音を追及したのであろう。

第3楽章は、ロ長調 4分の4 ノクターン風。慰めの儚いメロディー カンタービレ。
途切れるような伴奏音型が見事。きわめてピアニスティック。

左手のバスから右手に渡されるファンタジーで中間部へ。

中間部 ホ長調の 水の流るるごとく アルペジオの世界。それは 夢のようであり 幻想的に響くこと。

再現部とコーダ 左手伴奏音型は、共鳴をよく聴きながら 少しは混じりながらも 右手のアリアを汚してはいけない。
左手の半音階の下降をテヌート気味に。中間部の再起で 3連音符のバスが躊躇いながらも チェロのような雄弁に語り
右手のコラール音型とバランスをとる。静かで遠い世界、不穏な雰囲気を残しながら

フィナーレへの導入を預言している。最後の2音。
この響きは、リストのロ短調ソナタ(1853)に影響を与えただろう。

第4楽章 決然とはじまる最強音への提示。悲壮感はなく跳躍が躍動感を高めている。ベースの半音階を意識する事。
第2主題は、ダイナミックなスケールなど大胆である。右手のレジェロなモーションと低音部の躍動やオクターブ奏法がエネルギーを増大させている。

2回目は 4連符。ベースの半音階を意識する。

3回目は、6連符。波がうねるように。低音部の一打目の音で流れをつくる。ここでも、ベースの半音階を意識する事。コーダへと感情をたかめていく。

ロ長調という調性の明るさ。右手のパッセージと左手のオクターブの降下による音域の拡大がダイナミックに。
左手のバスをうたわせること。圧倒的なテクニックが輝かしくこのソナタの幕を閉じる。

プロフィール

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nishikunn
☆PCPAL代表取締役 日本アコーディオン協会理事 FMはしもとパーソナリティー  ピアノテクニシャン  なにわシャンソンコンクール審査員 市ボランティアサークル連絡協議会副会長 TOPページへnishikunnのページ

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