ショパン バラード第3番変イ長調作品47 1841年の作曲 この頃 ポロネーズ第5番 幻想曲作品49 などが作曲されている。円熟期。ミツキェヴィッチの「水の精」が動機になった。
湖には 水の精がいるとされている。それは たいてい美しい女性。日本でも 余呉湖 には 羽衣伝説がある。掟をやぶると 湖の底にしずめられるというもの。それは ある男が 違う女性を好きになってしまい 水の精にいたずらをしたから。また、月の世界にかえっていくというストーリーもある。湖には 山も映り 月の光もうつるから。神秘的であるが 湖底は怖い。
バラードとは 4分の6拍子などで書かれた 叙事詩に基づく物語風の音楽。4曲 つくられているが
1番 ト短調 2番 ヘ長調(コーダはイ短調)3番 変イ長調 4番 ヘ短調。3番は、唯一長調で書かれている、ポーランドの舞踊をフランスにあうかたちに融合させ成功させたのではと思う。洗練された華麗な音楽。
情熱的で優雅 バラードの名にふさわしい。他のバラードより 8分の6拍子がよく響いている。技術的に 細かいところで配慮があり その効果を出すのは 難しい。特にオクターブ奏法。右手の箇所 左手の箇所が どう弾くかにより 表現が変わってくる。拍子ありきではないのである。フレーズをよく考えなければならない。
ショパンは、フレーズを見誤るのは 例えば「わけのわからない言葉をしゃべるのと同じだ」と語っている。特にこの音楽は 重音が多いので 声部をどう響かせるかも大切である。
左手の魔術師 マルク・アンドレ=アムラン Marc-André Hamelin
ピアニスティックに演奏 ピアノが繊細である。
まず 導入 湖に水の精があらわれるような 変イ長調の響き 左手の半音階の伴奏型
序奏が終わり メインのバラードの主題。私は このリズムは フランス的でなく ポーランド的に響くものだと思っている。
展開部 変イ長調の典雅な響き 湖面に水を張ったような おそらく透明な水なんだろう。
高音部に向けて 迸る泉のようだ。
間もなく 霞がかかり 嬰ハ短調となる。オクターブで 力を強め 頂点へと。
嬰ハ短調 フォルテッシモ。重音で 主題を奏でる。月の光や、湖の深みにはまってしまう・・・
左手のオクターブ奏法。湖面の水をイメージ。穏やかな水面。
半音階の下がりは 何気なくだが 難しい。
エネルギーをため 最後のクレッシェンド。輝かしく 舞踏的に響かせる。
コーダ 弾むように 駆け上がり 最後の4和音は 意識して。他の 3つのバラードにはない長調で終わる・・・