スクリャービン/「幻想曲」ロ短調作品28
スクリャービン 1872-1915 ショパン 1810-1849 とは違う時代に生まれた。
この作品28のファンタジーロ短調 、ショパンの「幻想曲ヘ短調」作品49をどう受け止めたのだろう。
ピアノソナタ第3番と第4番の間につくられた性格的小品、単一楽章の作品。
唯一のピアノ協奏曲嬰ヘ短調作品18の後の作品。
ピアノ協奏曲を書き 形式に沿った作品を書いていたが あふれる詩情からは 自由な形式への憧憬をのぞかせる。
スクリャービンのなかで練習曲嬰ニ短調や前奏曲などが時々演奏会に登場するが、この曲はほとんど演奏されていない。
私は傑出した作品であると思う。
和声を築きながら、さらに左手の動機を盛り込み世界をつくっている。このダイナミックな重音と美しいメロディ部分の対比が絶妙。
ベートーヴェンは、ピアノソナタ32番ハ短調第2楽章ハ長調の変奏曲、ファンタジーを表現した。ひとつのテーマを変奏するスタイルで深く掘り下げていった。
ソナタ第32番ハ短調第1楽章の終わりの響きに似ている。
ラフマニノフのピアノソナタ2番第3楽章に比肩する作品だと私は思う。
ラフマニノフとスクリャービンはライバル。モスクワ音楽院でしのぎを削った盟友。
演奏するにもパッションが必要。長調の朗々と歌われる息の長い旋律は「憧れと飛翔」。
短調は情緒豊かで情熱的に。さらに感情を爆発させるファンタジー。
Yoonji Kim – Scriabin: Fantasie in B minor, Op. 28
ロ短調の主題 左手の3連符 オクターブの下降 右手の5連符 がこの曲の動機を支配する。それは夜想曲風にはじまる。
ニ長調の主題、バラード風。朗々とうたわれるメロディーは美しい。憧れと飛翔をもって。中声部の支えに注目。
左手5連符オクターブがアジタート気味に強調。この曲のクライマックスへ。
強音の右手オクターブ。重音の連打、左手のバスと中声部のバランスをみること。
最強音sFFF で激しく爆発「ロシアの焔は燃えている」
回帰し、主題が奏され、儚げな次の主題が出てくる。左手 雰囲気の演出が大切。難易度の高いところでもあるが、表現を大事にして。
大変難しいパッセージが続く「輝かしい焔」最後の2段。左手 5連音符の支配。そして、オクターブ・ユニゾンでアクセントの5つのロ音を意識する。
最後は、左手のオクターブ、やはりスクリャービンならでは。壮大に ファンタジーが締めくくられる。
ベートーヴェンの32番ソナタ、シューベルトの4手のための幻想曲ソナタ、ショパンの幻想曲、そしてスクリャービンのファンタジーがレガシーとして遺る。