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ショパン/バラード第4番ヘ短調作品52


ショパン バラード第4番ヘ短調作品52

ショパンの作品中 傑作に値する 円熟期最大の作品。10分以上を要する ピアノ独奏曲として 性格的小品としても大規模である。ピアノ協奏曲は2曲残しているが それと同じそれ以上の緻密さをピアノの音に凝縮した作品。

ショパンは 7歳のときにつくった ポロネーズト短調(遺作)、小さな一葉 前奏曲第7番イ長調でも 必ず「起承転結」を備えている。生涯を通して作曲された マズルカでさえ ドラマ性がある。駄作といわれるものは ほとんどない。

ベートーヴェン、シューベルトやシューマン ブラームスなどの作曲家も ロマン的要素はあるが ショパンほど ロマン的が相応しい作曲家はいないのでは。それは、シンプルなメロディーに決然たるバスの動きが的確である。「ピアノの詩人」といわれる所以がここにある。

その繊細な筆使いとは「導入」「第1の物語から変奏」「展開」「第2の物語」「ほとばしる煌めき」「転調回帰」「回想」「第1の物語を展開」 次なる展開(新たなる生命)「うねりと昂揚」「突然の終止 静寂」コーダ「哀しみと人生への問いかけ」最強音での応え「フィナーレ」

ポーランドの詩人 Adam Mickiewicz(アダム・ミツキェヴィッチ)の「ブードリスの3人の兄弟」が作曲のきっかけになっていると思われる。

ミツキェヴィッチ公園にて。ポーランド人は 愛国心が強い。キュリー夫妻 コペルニクス そしてショパン・・・

まず con moto で ハ長調の導入が7小節。コラール風。そして、ヘ短調のワルツの主題があらわれる。これを印象づけるように この動機が支配する。

変容するが 基本的には ワルツの性格は変わっていない。このように 少しづつ 繊細に変わっていくところが見逃せない。

第2の物語 哀しくロマンティック 詩情に溢れ 煌めきのような重音 変イ長調。

イ長調に転調し回帰する コラールの響きが昇華する場面。ドルチェッシモ。

最初の主題が帰ってくる。カノンの手法。バル・デ・モザの修道院のイメージが。変容してゆく。
ピアノならではの強弱のフレーズ。

ただの3小節ではない。ショパンの音に込められた フレーズを大切に扱うこと。

感情の波がうねる練習曲「大洋」のような怒涛のアルペジオ。カデンツァは勢いを強めストレット。
このフェルマータが大切。静寂の世界へ 響きを和らかく。起承転結の明確な指示。ショパンらしい。

この後、コーダ 嵐のような「con fuoco」走句が印象的にする。

せきこんだ 感情の波。最低音から 最高音までのパッセージ。最強音で応える。
1回目は、FFの指定があるが、2回目は、書いていないが おそらく piu FF possibke を指している。その直後の左手のバスの挙動は悲劇を生む。フィナーレは めくるめく感情と理性とのバランス。
右手18音 左手12音 もちろんバスが決定権を担っている。最後の音に向かってのぼりつめゆるめない。

アルゲリッチの演奏は ゆるめていない。最後の4つの和音も 速くなったテンポで激情のまま。
演奏家により響き方が全く違う。アシュケナージは 冴えた音でしめくくっている。
メジューエワは 硬い音色と強いアクセントで印象的にしている。

この曲はテーマを持っている。人生の物語を魅せることができれば 演奏の効果があったといえるだろう。

ショパンの生家 ジェラ・ゾラ・ヴォラ ここでは 休みの日などに サロンコンサートが行われている。