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「リラ・クラシック」2016.10.29(土)6:30 【再】2016.10.30(日)8:00 スクリャービン vol.10


リラ・クラシック」は、クラシック音楽でリラックスする60分。ネットラジオ(PC) http://csra.fm/asx/hasimoto.asx スマホアプリ(TuneIn Radio)。 設定 http://816.fm/?page_id=71

【曲予定】スクリャービン 幻想曲ロ短調作品28 ピアノ協奏曲嬰ヘ短調作品20 練習曲嬰ハ短調作品42-5 ポロネーズ変ロ短調作品21 交響曲第5番「プロメテウス」~「色光ピアノ(クラヴィエ・ア・リュミエール)」による~

ショパンを敬愛し ピアノの達人となった。作曲もはじめ モスクワ音楽院に入学する。同級生はラフマニノフで しのぎを削った。作曲の特徴は前期と後期に分かれる。

練習曲には 傑作がある。作品42-5 これは ショパン風にいえば 「木枯らしのエチュード」のように思える。ただ アルペジオでなく 重音で綴る ピアニスティックな作品。エフギニーキーシンがよく演奏している。

ピアノソナタ第4番までは前期 これ以降 神秘和音等 詩的な音楽が主になる。もともと スクリャービンは 長大な作品をつくるよりも 少しのモチーフを展開していく作品が多い。時代的にも ピアノソナタが量産される時代は終わっており 単一楽章のソナタや 性格的小品の中に価値を見出していた。ショパンでいえば マズルカが 生涯作曲し続けたが スクリャービンにとっては 前奏曲が 彼の宝石のような世界。

ラフマニノフとは対照的に 華やかな作曲家というよりは、ピアノの真髄を探求する教師であった。スクリャービンもまた 音の色 和声 ピアノに対する美学で独自の世界を築き上げた。こちらは、ベヒシュタインのピアノ。

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幻想曲ロ短調作品28 ロマン的であり ロシア的な重厚な響き 「焔は燃えている」 初期の代表的作品。

ポロネーズ変ロ短調 作品21 ショパンのポロネーズ 第5番嬰ヘ短調 や ラフマニノフ 前奏曲ト短調 作品23-5 alla marcia に似た雰囲気を持つ。

練習曲 作品42-5

ピアノ協奏曲嬰ヘ短調 作品20 唯一のピアノ協奏曲 美しい音楽 左手の超絶技巧が効果的。

交響曲第5番 「プロメテウス」 調性が無い 独創的な作品。楽器編成に 「色光ピアノ(クラヴィエ・ア・リュミエール)」 混声四部合唱 ハルモニウム 打楽器等 増4度音程の重なりの神秘和音が使われている。

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ハ調 赤

ト調 オレンジがかったバラ色

ニ調 黄色

イ調 緑色

ホ調 青色、白みがかった

ロ調 ホ調に似ている

嬰ヘ調 青、鮮やかな

変ニ調 スミレ色

変イ調 紫がかったスミレ色

変ホ調 メタリックな光沢を持った金属的な色

変ロ調 ヘ調赤、黒ずんだ


スクリャービン/「幻想曲」ロ短調作品28


スクリャービン/「幻想曲」ロ短調作品28

スクリャービン 1872-1915 ショパン 1810-1849 とは違う時代に生まれた。
この作品28のファンタジーロ短調 、ショパンの「幻想曲ヘ短調」作品49をどう受け止めたのだろう。

ピアノソナタ第3番と第4番の間につくられた性格的小品、単一楽章の作品。
唯一のピアノ協奏曲嬰ヘ短調作品18の後の作品。
ピアノ協奏曲を書き 形式に沿った作品を書いていたが あふれる詩情からは 自由な形式への憧憬をのぞかせる。
スクリャービンのなかで練習曲嬰ニ短調や前奏曲などが時々演奏会に登場するが、この曲はほとんど演奏されていない。

私は傑出した作品であると思う。

和声を築きながら、さらに左手の動機を盛り込み世界をつくっている。このダイナミックな重音と美しいメロディ部分の対比が絶妙。

ベートーヴェンは、ピアノソナタ32番ハ短調第2楽章ハ長調の変奏曲、ファンタジーを表現した。ひとつのテーマを変奏するスタイルで深く掘り下げていった。
ソナタ第32番ハ短調第1楽章の終わりの響きに似ている。

ラフマニノフのピアノソナタ2番第3楽章に比肩する作品だと私は思う。
ラフマニノフとスクリャービンはライバル。モスクワ音楽院でしのぎを削った盟友。

演奏するにもパッションが必要。長調の朗々と歌われる息の長い旋律は「憧れと飛翔」。
短調は情緒豊かで情熱的に。さらに感情を爆発させるファンタジー。

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Yoonji Kim – Scriabin: Fantasie in B minor, Op. 28

 

28-1
ロ短調の主題 左手の3連符 オクターブの下降 右手の5連符 がこの曲の動機を支配する。それは夜想曲風にはじまる。

28-3
ニ長調の主題、バラード風。朗々とうたわれるメロディーは美しい。憧れと飛翔をもって。中声部の支えに注目。

28-4
左手5連符オクターブがアジタート気味に強調。この曲のクライマックスへ。
強音の右手オクターブ。重音の連打、左手のバスと中声部のバランスをみること。
最強音sFFF で激しく爆発「ロシアの焔は燃えている」

回帰し、主題が奏され、儚げな次の主題が出てくる。左手 雰囲気の演出が大切。難易度の高いところでもあるが、表現を大事にして。

 

28-8
大変難しいパッセージが続く「輝かしい焔」最後の2段。左手 5連音符の支配。そして、オクターブ・ユニゾンでアクセントの5つのロ音を意識する。
最後は、左手のオクターブ、やはりスクリャービンならでは。壮大に ファンタジーが締めくくられる。

ベートーヴェンの32番ソナタ、シューベルトの4手のための幻想曲ソナタ、ショパンの幻想曲、そしてスクリャービンのファンタジーがレガシーとして遺る。


スクリャービン/ピアノソナタ第3番嬰ヘ短調「心理状態」


スクリャービン/ピアノソナタ第3番嬰ヘ短調「心理状態」 ピアニズムが結晶した。動機のはっきりした作品 構成も明確で わかりやすい。

ピアノソナタは全部で11曲あるが 1、2、3、5、7・・・高い評価をされている。私がいいと思うのは、3番だ。1番もよい。

左手のコサックだけに 難易度が高い。2番は 女性ピアニストがよく演奏している。私は この曲を ホロヴィッツで聴いた。
ホロヴィッツは ロマン的でありながらも 癇癪持ちで 破壊的な音色も出せるパワーピアニスト。

さて、3番の第1楽章 情熱がこもった Drammatico をいう指示 そして「心理状態」
気ままで荒々しい魂が、苦悶や闘争の渦中に投げ込まれるさまを表す。確かに 様々な感情。

すべての感情が「+ - で+になる」と。

「心理状態」難しい言葉のように思えるが 感情の表現の手段を示している。
「知・情・意」のバランスをとるかのように 無意識に私たちは選択している。
例えば、心理状態により色を選択している・・・

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もうひとつ「思考」の部分。思考は 3次元要素。ベクトルは3方向にあり その交差する値に依っている。
立体思考をおすすめしたい。R(現実)、I(情報)、F(直感)を組み合わせた考え。
これについては 精神科医 香山リカさんの著作本をご参考に。http://www.caravan.to/

 

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第1楽章 対照的にもとれる バランス


スクリャービン/練習曲嬰ハ短調作品42-5


2015年は スクリャービン 没後100年にあたる。ショパンを敬愛し 独自の詩的 幻想的情緒を作品に取り入れた。神秘主義と言われるが それは ピアノソナタ第5番以降になる。それまでは ロマン派を組む 国民音楽派の作風であった。「左手のコサック」として知られ 様々なテクニックを駆使している。その作品群が ピアノソナタ 練習曲 エチュード 前奏曲である。練習曲は ショパンが有名だが リストは「ためいき」など 演奏会用練習曲がある。

練習曲嬰ハ短調作品42-5 は嬰ニ短調作品8-12 とともに傑作の一つ。素晴らしい作品。
左手の跳躍や右手の流麗な旋律の流れ。難しさ故に 感情をこめて演奏したい曲。

2回目のテーマが出てくる。この時の内声の表現が難しい。半音階的で 決して強く弾かれない。流れるように。

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後半の左手の「強打のオクターブ 一番下の段の最低音は A1」。こういう曲があっただろうか。
左手のオクターブが終わり次のステップが。

右手のピアニスティックで 憂愁を帯びた 流麗なメロディーライン。一度目とは違って
繊細にしている。上の段、2小節目。右手の下声の親指や人差指の運指が大切になる。

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左手も右手も嵐のごとく勢いを強めていくが 風はおさまる。特に左手の跳躍が特徴で それを鐘のごとく響かせること。
ショパンの「木枯らしのエチュード」 スクリャービン風とも。

https://youtu.be/QafBsklr99c

Scriabin – Etude Op. 42 No. 5 (Kissin)


メモリアルイヤー2015 「スクリャービン」


メモリアルは 100年 50年 25年 10年などがある。外国では 4分の1も 区切りの一つと考えるから。スクリャービン(1872 – 1915)が没後100年にあたる今年。 なぜ スクリャービンを聴くのか。

ショパンのようにロマンティシズムを持っていること。激情の迸る作品は、ピアニストを駆り立てる。

ノヴォデヴィチ女子修道院 は「世界遺産」。1524年 モスクワ大公・ヴァシーリー3世の命によって建てられた。その隣にある ノヴォデヴィチ墓地に 多くの著名人が眠っている。アメリカに渡ったラフマニノフは ここに入ることを希望していたが 戦中であり希望がかなわず アメリカに墓地がある。

スクリャービン ショスタコーヴィッチ ツルゲーネフ プロコフィエフ エリツィン大統領 ・・・

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「神秘和音」 スクリャービンの造語である。自分の言葉で 音楽に語りかけている。

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交響曲を5曲作っているが、「法悦の詩」(英語  The Poem of Ecstasy)無調音楽に近づいている。享楽の世界へ 昂揚する音楽。ここで 神秘和音が使われている。

「左手のコサック」として ピアノ演奏技術を達観したスクリャービン。左手のための夜想曲 ノクターンOp.9-2は 安らかでかつ情熱的で 月光のようだ。

舘野泉 Scriabin Nocturne for left hand

ショパンの練習曲(エチュード)を超えるような作品を ライバル ラフマニノフ とともに凌ぎを削った。作品8-12 これを14歳のときに書いたという。ホロヴィッツが好んで弾いた作品。

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後期は神秘的 スクリャービンの考える「色」などが 音に。詩= 「ポエム」が よく登場する。

ポエム ノクターン 作品61 Scriabin – Poème-Nocturne op 61


スクリャービン/練習曲嬰ニ短調op.8-12


スクリャービン/練習曲嬰ニ短調op.8-12「悲愴」

スクリャービンといえば 神秘和音。増音程を重ねて「法悦の詩」を作った。
初期の ピアノ協奏曲嬰へ短調は 神秘和音を使っていない作品で ショパン的で壮麗。ロシアの舞曲 自然の壮大さ が伝わってくる。

ピアノソナタは、「白ミサ」から神秘和音の響きがあり ロマン派 国民音楽派 の流れをくんでいる。

練習曲嬰ニ短調8-12は 「悲愴」ともいわれ、ロシア帝国の栄華 哀しみを表している。

ウラディーミル ホロヴィッツが好んでアンコールで弾いた。そして スクリャービン自らもよく弾いたという。すごい迫力。

ところで 左手の1オクターブ4度という音程がでてきて 手の小さい人は演奏が大変かもしれないが そこはテクニックで。

Maria Lettberg performs an Etude Op. 8 No. 12 by Scriabin (alternate version) マリア・レットベリ
スクリャービンのよき解釈者として 全集を出している。

この曲を手の大きくない(1オクターブが届くくらいの)ピアノの先生が練習しているのを聴いて驚いた。スクリャービンの曲を演奏するのは
「難易度」ではなく、弾く技量があるかどうかが一目瞭然。練習に耐えられるという意味がある。
ドラマチックな調性で音型は、スクリャービンの練習曲の中ではまだ弾きやすい部類に入る。

中間部 右手オクターブと左手の一拍目のオクターブが劇的な和声を醸し出している。
フォルテッシモが出てくるが クライマックスは最終の方にあるので セーブして。

コーダの左手の激情のオクターブの内声を表現したい。軟弱では、すまされない。音楽を伝える情熱がパワーとなっている。
この曲は、徹底した「オクターブ」でがっしりとした「和音」が積み重なる。その背景を感じとってほしい曲。