15歳でリストのパガニーニ練習曲を演奏した アリス=紗良・オット。それ以来 ラ・カンパネラは 自家薬籠中にしている。また ベートーヴェンを得意とし 熱情ソナタなど名演が多い。今回は ベートーヴェン バッハ ブゾーニ リスト 凄いプログラムを。
5月23日(土)14時から びわ湖ホール大ホール 2階 正面の前2列目 少しカーブした左側。パガニーニ練習曲は ピアニストがなかなかプログラムを組まれない。そして バッハ330年生誕の年に ブゾーニ編曲のシャコンヌ。東京、大阪などでも公演。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調『テンペスト』Op.31-2
バッハ:幻想曲とフーガ イ短調 BWV944 バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ
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リスト:愛の夢 第2番 ホ長調/第3番 変イ長調
リスト:パガニーニ大練習曲 第1番 第2番 第6番 第4番 第5番 第3番「ラ・カンパネラ」
アンコール ショパン 雨だれの前奏曲 グリーグ 抒情小曲集から「小妖精」
びわ湖ホール 1800名収容 アリスは、檀上で 何倍にも大きくみえる。白いドレスに裸足。26歳の世界的女流ピアニストが「ピアノ」という音楽はこうなんだと教えてくれる。超絶技巧は勿論だが、演奏曲に合わせて スタイルを変えていくのは流石。ベートーヴェンの テンペストソナタ ミステリアスな開始。聴き手を惹きこむ才能。息つく間もない 弱音や曲間の緊張感。それだけ 聴衆も集中しているということ。続いてバッハ幻想曲イ短調 チェンバロのようなオルガンのような響かせ方 現代のピアノではどうか。ペダルで華麗にアルペジオが飛翔する。とにかく速い演奏。
バッハ=ブゾーニ シャコンヌ 緻密であるところは 聴かせて ダイナミックなところは ヴィルトゥーゾ的に みせる。余裕が感じられた。オフでは、「ロック」なども聴くという彼女。ピアノと格闘というより シャコンヌでロックのような箇所がみられた。
後半のリスト 「愛の夢 第3番」 おなじみの曲だが、アリスの「愛の夢」純粋な世界。ペダルを多用しないで、打鍵力と繊細さが アリスの持ち味なんだろう。
パガニーニ大練習曲 3番と6番を入れ替えでのぞむ、独自の趣向。前半の1曲目 緩急をつけて 情緒を出す。前半の最後は 主題と変奏 私は久々でこの曲の生演奏をみた。指が速くまわっている。速い部分とゆっくりな部分のメリハリをつける演奏。後半の最後は「ラ・カンパネラ」よくコントロールされている。特に中間部のカデンツァの右手の下降 両手交差による高音部への上昇は「鐘」をイメージ「可憐な華」と思った。コーダは、アリスの渾身の表現。一度、この「ラ・カンパネラ」を生で聴いたら忘れられないだろう。
こちらは、サイン会の様子。ヘアスタイルがショートになり、軽くなった印象。(撮影許可されています)
別会場でのエピソードを聞きました。演奏中の携帯電話の着信音のこと、アリスが何といったか・・・
アンコールの前にアリスが一言「自分も荷物を落とした事があり・・・」「気にしないでくださいね」
「人間は完ぺきではないから。そういうことが音楽にも必要なんです」
この後のアンコール後の拍手が鳴りやまなかったのは言うまでもない・・・アリスというピアニストが人間的にも 気遣いできる人格を持っている。