ショパン/ポロネーズ第5番嬰ヘ短調作品44(1841年作曲)
ショパン(1810-1849)のポロネーズは全部で18曲ある。青年期に書かれた「序奏と華麗なポロネーズ」(1829)作品3(チェロとピアノ)
アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ(1831、1834)作品22(ピアノと管弦楽、またはピアノ独奏用)がある。情熱的で華麗なテクニックを散りばめている。
生前に出版されたのが7曲、遺作として出版されたのが3曲(作品71)+6曲(作品番号なし)となる。
7歳の時に作曲したポロネーズト短調(遺作)が最初の作品で、この曲は「ポーランド第二の国歌」といわれるほど膾炙されている。
ポロネーズは、ポーランドの民謡舞踏風の4分の3拍子とリズムが特徴で、第2拍が強調されシンコペーションなどが使われている。右手や左手の内声が表現され重厚で華麗である。また活気にあふれたものと陰鬱で感傷的なものとに分かれる。
よく知られているのが、第3番イ長調「軍隊ポロネーズ」第6番変イ長調「英雄ポロネーズ」第7番変イ長調「幻想ポロネーズ」
他の作品は、時々演奏されるが知られているとはいえない。5番をイーヴォ・ポゴレリチの演奏で知って衝撃を受けた。強靭なテクニック。
陰鬱だが情熱に溢れた曲でファンになった。個性的な表現がショパンコンクールで話題をさらい、審査員のマルタ・アルゲリッチは「彼は天才よ」と。
ポロネーズ第5番嬰ヘ短調作品44(1841)「悲劇的」と謂われている。私的には「闘牛士のマンボ」の如くこの曲の転調が色彩を添えている(嬰ヘ短調 → へ短調)
そういえば、宇多田ヒカルの「Wait & See」(ヘ短調 → 嬰ヘ短調)激情の切なさ + 遠隔転調 が出てくる。さりげなく唄っているが そこには 深刻な調性を使い シグナルを鳴らしている・・・
Ivo Pogorelich – Chopin polonaise op.44
Ⅰ 序奏 嬰ヘ短調 主題(A B A´ B´ A”)
Ⅱ 中間部 イ長調 C B C´
Ⅲ マズルカ イ長調 D E D E
Ⅳ 再現 嬰ヘ短調 主題(A´ B A コーダ)
Ⅰ-A ショパンが「新しいファンタジー風のポロネーズができた」と手紙に書いているが、オクターブの徹底した表現は 素晴らしい効果をあげている。
ⅠーB ヘ短調 変イ長調
1-A´ 左手のパッセージが凄い。オクターブで強調されるだけでなく 音の広がりにも拘っている。
Ⅱ イ長調 オクターブの舞踏のリズムが強烈で 何に向かって行進しているのだろう。
Ⅲ マズルカ イ長調 穏やかで牧歌的。ショパンの新しいファンタジー。
【appendix】再現部の直前。このスケールが難しい。
Ⅳ コーダ 情熱がこもっている。左手の上昇するスケールがクライマックスを築く。
だんだん弱めていく。距離が遠くなっていくイメージ。